エンジンのパワーを表す表現で良く目にする「馬力(ばりき)」。機械を購入する際のひとつの目安として気にされるかたも多いと思います。この記事では馬力について解説していきます。
ネット値? グロス値? 馬力のはてな
 
                                そもそも「馬力」とは何か?
馬力とは「仕事率」のこと。
どのくらいの重さを
どのくらいの時間で
どのくらいの距離を動かしたか(持ち上げたか)
を表します。馬力の単位表記は、日本語だとそのまま「馬力」、単位記号は「PS」になります。PSはメートル法を用いた馬力表記に使われます。
「HP」という表記も見かけますが、こちらはヤードポンド法を用いた馬力の単位になるため、PSとHPの数値をそのまま比べることは出来ません。
1PSとは、75kgのものを1秒間で1m動かした(持ち上げた)エネルギーのことを指します。
……ここまで読んでお気づきかもしれませんが、実は1馬力=馬1頭分のちからではありません。そして、力の強い人であれば1人で1馬力以上のちからがあるでしょう(←後述で詳しく解説)。
また、国際的には馬力を表す単位には「kW」を用いるのが一般的なのですが、日本ではあまり浸透していません(ちなみに1PS=0.7355kW / 1kW=1.356PS になります)。
グロス値とネット値
機械のカタログを見てみると「最大馬力10PS(グロス値)」や「最大馬力10PS(ネット値)」という表記を良く目にします。同じ10PSと表記されていれば、ちからの大きさは同じでしょうか?
ネット値……マフラーやエアクリーナーなどの付属品が取り付けられた状態で出せる最大馬力
答えは……
「10PS(ネット値) 」のほうが、「10PS(グロス値)」よりも大きな馬力を発生させます。
車だとネット値で表記することが一般的ですが、農業機械や産業機械はグロス値とネット値のどちらで表記するかは統一されていません。理由の一つとして挙げられるのは、完成品メーカーとエンジンメーカーが異なることが多いからです。
エンジンのはなし
 
                                                                            例えば、キャニコムは完成品として乗用草刈機『フルーティまさお』や小型特殊自動車『下町小町シオン』を販売していますが、まさおに搭載されているエンジンはホンダ製、シオンのエンジンはヤマハ製です。このように様々なメーカーの完成品として売られる商品に搭載されているエンジンを「汎用(はんよう)エンジン」といいます。
汎用エンジンは完成品をつくるメーカーに対して、メーカーの希望する仕様に沿ったエアクリーナーやマフラーを装着して出荷しています。エアクリーナー1つだけでも標準仕様、サイクロン式、オイルバス式、果てはプレクリーナー付き……など、そのエンジン搭載の機械が使われる現場に合わせて作られています。
そのため、汎用エンジンそのもの最大馬力を表すグロス値はエンジンメーカーにデータがあるため公表していても、ネット値は公表していない、そもそもデータ取りしていないことが多いです。そのため馬力を購入の決め手として検討する際は、グロス値かネット値かを確認することが大事です。
以上、ネット値とグロス値の関係でした。
エンジンは、機械を動かすための「力」を出しています。この力のことを「出力」と呼びます。エンジンの出力には2種類あります。
最大出力……瞬間的に出せる最大のちから
定格出力……安定的に長時間出せるちから
少し分かりにくいので人で例えてみると、
最大出力……瞬間的に持ち上げられる最大の重さ(一瞬だけ出せる全力の力)
定格出力……長時間持っていられる重さ(ずーっと出し続けられる力)
大人の男性であれば、瞬間的には100kgくらい持ち上げることが出来るでしょう。しかし、長時間となると10kgくらいが限界かもしれません。
ちからの強い人であれば1人で1馬力以上のちからがあるでしょう、と先ほど記述しました。
これは最大出力のことなんですね。
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