キャニファン

2024年9月13日

下刈りを倍速にする造林機『山もっとモット』岩手の林業会社が2台目を導入した理由は?

下刈りを倍速にする造林機『山もっとモット』岩手の林業会社が2台目を導入した理由は?

岩手県の丸大県北農林、はかどる下刈り、その理由は?

岩手県の北部にある創業47年目を迎えた林業会社、丸大県北農林(以下略、丸大)。植林、素材生産、間伐、森林管理の4つの事業を柱としてベテラン、若手が織り交ざった総勢28名の林業会社です。

丸大では、キャニコムの多目的造林機『山もっとモット』が2台、稼働しています。導入からしばらく経ったところで、使い勝手などのヒアリングのために訪問しました。

「伐根などの前処理することで草刈りが倍以上、もう比べものにならないほどに、はかどる。
山を一気にダーーーっと草刈りができる。根株で止まることがなく、全速力に近いくらいの早いスピードだよ」

こう話してくれたのは代表の大粒来 仁孝さんと●●さん。●●年に1台目の『山もっとモット』を導入し、その後2台目を●年●月に追加し、現場を稼働させています。

canyfan_丸大県北農林

どうする? 根株という障害

丸大では伐採後の造林に向けて、以前は人の手によって伐根作業をしていたそう。

根株を切り刻むのは80~90ccクラスの大きめのチェンソー。根株はアカマツが多く、根張りも深く強く、大径木になるほどやっかい。加えて、石やツルですぐに切れ味が悪くなり、またハーベスタ刃による伐採後は、根株に高さがあるので、人力で伐根処理をするのは本当に大変だったと振り返る●●さん。1haを処理するのに、4~5人がかりで伐根作業をして、一日では終わらなかったそうです。

canyfan_丸大県北農林_根株

根株という障害物をどうにかしないといけない。一度、地拵えの機械を入れないと、下刈りが効率的にならないと考え、1台目の『山もっとモット』導入を決断されました。

実際に使ってみて、アカマツの根株はもちろん、笹の根も難なく粉砕。岩のあるところに機械の進入は厳しいので、そこは広葉樹を植えることにしたという。また、前年の植林時、機械の進入を踏まえて苗を植える間隔を以前の2.25mから2.5mに変更したので、今回は『山もっとモット』がどんどん入り込むことができとのこと。

機械化のための現場調整もあったが、結果、根株という障害が取り払われたことで、下刈りが、引いては造林作業のスピードが上がったのでした。

canyfan_丸大県北農林_下刈り

2台目があることで、班単位で負荷軽減になる

重機の2台目の購入はさらに大きな決断です。購入を決めた理由を伺いました。

「一度使ってみて “良い” と思えば増車したくなる。なぜなら、 “良い” と思っても、1台は1台でしかないから」

丸大の造林班は全部で5人。機械が1台のみであれば、ひとりはその1台を使えるが、あとの4人は従来のやり方のままだ。2、3台を所有していて、交代で使うことで、それぞれの身体の負荷軽減になり、ここで初めて班単位で、効率化・省力化となる。

また、毎日、刈払機を背負って草を刈るのは心身ともにキツく、滅入ってしまうだろう。新入社員だったら、なおさら。猛暑の中での作業が長く続けば、離職に繋がりかねません。造林機と刈払機を交代で使えば、幾分気分も違うだろうし、視野も広がるだろう、と大粒来さん。

機械化を日々の業務に落とし込み、明らかに効率化・省力化ができたことと、長く林業に携わってほしいという社員への想いがあり、2台目の購入に至ったようでした。

canyfan_丸大県北農林_草刈り

造林機をモット良く動かすコツは?

丸大が施業するのはは、岩手県でも比較的なだらかで、急傾斜がほぼない場所。アップダウンが少ないということは、機械の能力をフルに発揮しやすい場所です。実際のところ、使っていてどうか、コツなどを聞いてみました。

「初めて乗るひとは、素材生産の伐採重機と同じ感覚で使っちゃうから、つい勢いにのってガーーーっと、いっちゃう。造林機械ならではの乗り方を覚えていかないとね。これは造林機械、と思って操作をしてあげることがコツかも」

まったく故障がないわけではないが、構造自体がシンプルだから、修繕もしやすいと話してくれました。

canyfan_造林_丸大県北農林

造林で稼ぐ

「伐ったら、植えるのは当たり前。伐った分、しっかり植えていけば、資源は枯渇しない。そうすれば、いい山がずっと続く」

丸大が造林を積極的に進めるのには、大粒来さんにこんな考えがあるからです。

林業の盛んな岩手県では、木材産出量が全国トップクラスながら、造林はまだ定着していないそうです。大粒来さんは県内の造林率を上げていきたいと考え、他の会社が素材生産のみをするならば、そこの造林も請け負っていきたいと話します。

一方、夏場の下刈り作業を社員に強いることはしたくないと話します。自身の経験からも、夏の下刈り作業には参ってしまうし、自分がイヤなのに、社員だって任せられたらイヤだろうと社員を想う大粒来さん。

本来、造林からは稼ぎは生まれません。でも、下刈りは必ず必要な仕事であり、いずれ収入源になっていくと考えているそう。だから経費を抑えながらでもやるべきだと話します。

「今、市場に出ている造林系機械の中で、一番使えるのは『山もっとモット』。機械の稼働率が高い。今、一番稼げる機械だ」

じいちゃんがつくった山に

『山もっとモット』を高く評価してくれる大粒来さんには、4才になるお孫さんがいるそう。

「じいちゃんが山の木を切っちゃった」ではなく、
「じいちゃんが山をつくった」と孫に言われたい、と顔をほころばせていました。

造林に欠かすことのできない下刈り作業。この工程の効率化、省力化、軽労化のために “根株”という障壁を機械で乗り越えるべく誕生した『山もっとモット』が、丸大県北農林でよりいっそう活躍することを願っています。

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